
アメリカンワークウェアの代名詞とも言える
CARHARTT(カーハート)
元は労働者のための頑丈な作業着としてスタートしたこのブランドは、やがてHIPHOPやスケート、グラフィティなど西海岸カルチャーと結びつき、ファッションのアイコンへと進化を遂げました。
ヴィンテージブームが再燃する中、今再び注目を集めているのが90年代以前の「オリジナル・カーハート」。
本記事では、そんなカーハートのブランドヒストリーから、人気モデル・カラー、タグの違いによる年代判別法まで、コレクターやファッション好き必見の情報を徹底解説していきます。
ブランドの歴史
カーハート(Carhartt)は
1889年にハミルトン・カーハートがアメリカ・ミシガン州デトロイトで創業した老舗ワークウェアブランドです。
当初は卸売業からスタートし、後に労働者向けの耐久性に優れたワークウェア製造に本格参入。
代表的な素材であるダック生地やデニムを用いたオーバーオールやジャケットを展開し
鉄道員や工場労働者の需要に応えることで成長しました。
1966年には現行の「Cロゴ」が誕生。
90年代以降はHIPHOPやストリートカルチャーの影響で若者やファッション層にも人気が拡大。
1997年にはヨーロッパ発のカジュアルライン「Carhartt WIP(Work In Progress)」がスタートし
現代的なデザインやシルエットを取り入れたアイテムも展開しています。
1935~ UNION MADE
1935年から1960年頃まで
Carharttをはじめとするアメリカのワークウェアブランドの製品タグには
「UNION MADE(ユニオン・メイド)」の表記が記載されていました。
- 「UNION MADE」は「労働組合によって作られた製品」を意味し、当時のアメリカでは労働組合(ユニオン)が大きな影響力を持っていた。
- 全米自動車組合(UAW)などの組織が強く、組合員は組合に所属する労働者が作った製品のみを購入するよう指導されていたため、タグの「UNION MADE」表記が消費者にとって重要な指標となっていた。
- Carharttはこの時期、製品を購入した労働者にカレンダー付き手帳を無料配布し、その扉には「アメリカの労働者諸兄へ」と呼びかけ、労働者の団結やCarharttが常にワーカーとともに歩んできたことを強調していた。
- この「UNION MADE」タグは、Carharttが労働者のためのブランドであること、そして労働組合に賛同する姿勢の証明でもあった。
1966年 Cロゴの誕生
1966年、Carharttは現在も使用されている「Cロゴ」をブランドロゴとして発表しました。
「Cロゴ」は、豊かさを象徴するギリシャ神話の「コーヌコピア(豊穣の角)」がモチーフとなっています
ゼウスが乳母として育てられた牝ヤギアマルテイアの角から生まれました。
角からは常に花や果物が溢れ出て、富と安寧、幸運、勝利、平和の象徴として愛されています。
1980~90年代:HIPHOPやスケーター文化で人気拡大
1980~90年代、Carhartt は本来のワークウェアとしての“頑丈さ”と“実用性”に加え、ストリートカルチャーとの融合でも歴史的なブレイクを果たしました。
特にスケーターたちはオーバーサイズのジャケットやパンツを好み、その動きやすさと耐久性がジャンプやグラインドにぴったりとマッチしたため、自然とファッションとして取り入れられ始めました。
同時期、西海岸発祥のギャングスタラップ系ヒップホップのアーティストたちも、Carharttをストリートスタイルの象徴として支持。オーバーサイズ×ブラックを基調としたコーデがストリートに広がるきっかけとなりました。Tommy Boy Recordsが1990年に800着のCarharttジャンパーを関係アーティストに提供したのも、大きなエピソードの一つです 。
1981年にトム・シルヴァーマンによってニューヨークで設立されたアメリカのインディーズ音楽レーベル
De La Soul、Queen Latifah、Naughty By Nature、Coolio、House of Painなど、多くの著名なヒップホップ・アーティストを輩出した80~90年代ののヒップホップにおける重要レーベル。
Tommy Boy RecordsがSTUSSYにデザイン依頼したACTIVE JACKETはかなり高額で取引されています
まとめると、1980~90年代はCarharttがストリート文化の文脈を得てブランド価値を大きく飛躍させた時期。スケートとヒップホップ、そしてヨーロッパ展開への転機があったからこそ、今もなお語り継がれる“アイコン”へと成長しました。
人気モデル
デトロイトジャケット

1954年に初めて製造され、アメリカの建築作業員向けにデザインされました。
労働者のニーズに応えるため、頑丈で耐久性のあるダック生地を使用し
ショート丈、ウエストと袖先の調節機能、襟付き、3つのポケット仕様で設計されました。
ジョニーデップが着用したことで近年注目度が上がっています。
製造工程
- 素材選定:12オンスコットンダック生地を使用
- 裏地構造:ブランケット素材を使用し保温性を確保
- 縫製:トリプルステッチ縫製で強度を向上
- 補強加工:背面に水平ステッチによる補強を施工
特徴的ディテール
- 左胸のジップ付きポケット
- アクションプリーツによる動きやすさ
- コーデュロイ襟の採用
- 調整可能なカフス
アクティブジャケット

フーデットパーカータイプのデザインで、より幅広い層への展開を図ったモデルです。
カーハートのなかで最も知名度の高いアイテムで数多くの著名人が着用しています。
製造仕様
- 素材:-
- 縫製:トリプルステッチ縫製
- 機能性:カンガルーポケット、袖・裾のリブ仕様
- ライニング:春夏用(サーマルタイプ)と秋冬用(キルティング)の2種類
トラディショナルジャケット

トラディショナルジャケットは、Carharttの定番モデル「デトロイトジャケット」と似たシルエットながら、着丈が長く、身幅も広めに設計されています。
厳しい労働環境や寒冷地で働く人々のために設計されたモデルで、特に真冬の作業に対応するため保温性と耐久性を重視した作りが特徴です。
- 素材:12オンスコットンダック地
- 縫製:トリプルステッチ縫製
- 機能性:大容量のカンガルーポケット、ベルクロ仕様のフラップポケット
- ライニング:秋冬用(キルティング)
サンタフェジャケット

サンタフェジャケットは、両胸から背中にかけてウエスタンシャツのようなヨーク(切り替えライン)が入った独特のデザインが最大の特徴です。
当初は「ウエスタンジャケット」と呼ばれていましたが、90年代後半からアメリカ南西部の都市名「サンタフェ」にちなんで現名称となりました。
- 素材:ダック地
- 縫製:-
- 機能性:フロント両サイドのスラッシュポケットのみ
- ライニング:起毛素材や中綿入りキルティング
チョアコート

チョアコートは1920年代半ばから展開されているCarharttの代表的なカバーオール型ワークジャケットです。
ブランドのルーツである鉄道員や建設作業員など、アメリカの労働者のために開発され、1世紀近く経った今も愛され続けています。
ヴィンテージカーハートを代表するアイテムで、古いものですと高額で取引されています。
また最近では日本の岡山デニムブランドで注目されている「TCB JEANS」から、カーハートのチョアコートを
サンプリングしたアイテムが発売されている注目アイテムです。
人気カラー、柄
ペトロール(PTL)

青みがかったグレーのような色で海外で人気
モスグリーン(MOS)

ジョニー・デップがデトロイトのモスグリーンを着用したことで人気急騰中
リアルツリー(CMO)

古着アイテム全般で需要が高い柄
セメント(CMT)
明るいグレー、多才に活躍されている野村訓一が着用したことで人気
年代判別方法
日付コード
CARHARTTは1984年頃からタグに3~4桁の日付コードを記載するようになりました。
1997年からは4桁の日付コードに統一されています。

このタグですと2002年9月に製造されたものになります。

こちらのタグだと1986年10月に製造されたものになります。
タグによる年代判別
1930年代~1940年代前半:単色ハートタグ

赤1色のハートタグ
1940~50年代:2色ハートタグ(赤×青)

青、赤の2色で刺繍は40年代、プリントが50年代と言われています。
何パターンかあり、RN表記有りの場合は59年以降の可能性が高いです
1960年代:トリプルネーム、デカタグ
トリプルネームタグ

carharttが”HEADLIGHT”,FINCK”を買収したためトリプルネームとなっている。
デカタグ

大きなCの中にCARHARTTの文字が入っています、青色もあり
1966年~1980年代:Cロゴタグ(コットンプリント)

コットン地のタグにプリントされたもの、80sくらいからナイロン地に切り替わる

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
本記事では、1889年の創業以来、労働者の実用性を追求しつつ、ストリートカルチャーや音楽、アートといった多様なカルチャーに彩られて進化してきたCARHARTT(カーハート)の世界を紐解きました。
当初は過酷な現場で求められる頑丈さと機能性を追求したワークウェアでしたが
やがてヒップホップやスケーターといったカルチャーシーンに支持され
「アイコン」へと昇華。また、90年代以降のWIP(Work In Progress)展開でファッション性も兼ね備え
現在ではヴィンテージ市場においてもますます希少価値が高まっています。
本記事が、アイテム選び・年代判別の参考となれば幸いです。
そして、EAGLEBASEではヴィンテージワークウェアの魅力をこれからも皆さまに届けてまいります。
どうかこれからの着こなしやコレクションの一助になれば嬉しいです。
それでは、次回の更新もどうぞお楽しみに!
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