リーバイス シルバータブとは?その魅力を解説
シルバータブの歴史とブランド背景
SilverTab(シルバータブ)は、デニム界の王者リーバイスが1985年に立ち上げたコンテンポラリーラインです。
1980年代後半から1990年代にかけて若者向けに展開され、当時主流だったリーバイスのクラシック路線とは一線を画す異端のシリーズでした。
ブランド名の由来は、リーバイスの象徴であるバックポケットのタブ(後述)が赤から銀色に変更されたことにあります。

シルバータブはヨーロッパ企画として発表されたとの説もあり、特にヨーロッパの若者に爆発的な人気を得た伝説的ラインとして語り継がれています。
90年代当時、このラインはリーバイスにとって「王道からの挑戦」とも言える大胆な試みであり、ストリートカルチャーに照準を当てた革新的デニムシリーズでした。
シルバータブのオリジナル展開は2000年代初頭まで続き、当時の生産国にはアメリカ(USA製)も含まれていました。
ヴィンテージ市場では特に1990年代アメリカ製の個体が人気で、古着好きにはたまらない魅力があります。

その後しばらく姿を消しましたが、2017年に待望の復刻を果たし(日本国内では2018年頃に一度生産終了)
さらに2022年に再復活して現在に至ります。
復刻版では当時のワイドシルエットを踏襲したルーズフィットのジーンズやアパレルが展開され、新たにストレートフィットのモデルも加わりました。
90年代リバイバルブームやオーバーサイズの定着化も追い風となり、シルバータブは定番で人気の高いアイテムとなっています。
Levi’s内でのシルバータブの位置づけと時代背景
シルバータブが誕生した1980~90年代当時、ファッションシーンではストリートカルチャーの台頭が著しい時代でした。
アメリカではHIPHOPカルチャーが全盛を迎え、ヨーロッパではレイブやクラブミュージックが若者文化を席巻し、東京でもストリートファッションが熱気を帯びていました。
そうした各地の若者たちに共通したトレンドの一つが「ゆったりとしたパンツを履く」スタイルで、ダボッとしたシルエットのデニムが支持を集めていたのです。
リーバイスは伝統的に501に代表されるような定番ストレートシルエットを主軸としてきましたが、シルバータブはその常識を破る形で登場したラインでした。
当時リーバイス社にとってこの異端なワイドデニム路線は大きな挑戦であり、まさに従来路線への反逆とも言える試みだったのです。
従来の501とは一線を画す大胆なワイドシルエットとストリート感溢れるスタイルで、HIPHOPアーティストやスケーターたちにも愛用され一大ムーブメントを起こした。
シルバータブはクラブやストリートで踊りやすいルーズなデザインを追求し、結果的に既存のリーバイスファンのみならず新たな若者層を強力に惹きつけました。
リーバイス内でのシルバータブの位置づけは、いわば「ストリート志向の派生ライン」であり、メインライン(赤タブ)とは差別化されたカジュアル&ワイドフィット路線を担っていました。
そのためシルバータブの登場は、リーバイスブランドに新風を吹き込む異端児として歓迎される一方、当時の保守的なデニム愛好家からは驚きをもって受け止められたようです。
しかし時代が求めたルーズシルエットの波に乗り、シルバータブは結果的に90年代を象徴するラインの一つとなりました。
2017年~広告ビジュアルアーティストで”BIM“,”KID FRESINO“,”スチャダラパー“など、日本を代表するラッパーが広告ビジュアルに採用されました。
シルバータブの種類と見分け方
バギー、ルーズフィットの違い
代表するモデル:バギー、ルーズフィット、などシルエット解説
シルバータブには「太いだけ」のパンツではなく、複数のシルエットモデルが存在します。
代表的なフィットとしては “Baggy(バギー)”, “Loose(ルーズ)”, “Relaxed(リラックス)” などが挙げられ、それぞれ微妙に異なるワイドシルエットを楽しめます(他にも“Boot”や“Carpenter”など特殊モデルもあり)。
以下に主なシルエットの特徴を解説します。
Baggy(バギー)

シルバータブと言えばまずこのバギーを思い浮かべる人が多い定番モデルです。
最大の特徴は極太のワイドシルエットで、腰回り・太もも周りがたっぷりと余裕があります。
ただし裾にかけてわずかにテーパード(先細り)が効いている点もポイントで、単なるだぼだぼではなく足先に向けてシルエットが引き締まる絶妙なバランスです。
この適度なテーパードのおかげで全体が卵型のような丸みを帯び、オーバーサイズで履いた場合には膝のあたりにふくらみが出る独特のシルエットになります。
ストリート感満点で、特にスケーターファッションや90sヒップホップのイメージにマッチする一本です。
Loose(ルーズ)

一見バギーと大差ない太さに思えるルーズですが、実はバギーよりもテーパードが緩やかでストレートに近いワイドストレートシルエットです。
ワタリ幅(太もも周り)はある程度太めですがバギーほど極端ではなく、膝下にかけてほぼまっすぐ落ちるラインが特徴的。ゆったり感はしっかりありますが裾までドカッと太い印象で、全体をストンと落としたようなシルエットが現在のトレンドにも合致しています。
現代のストリートではワイドパンツを裾に“たまり”を作らず真っ直ぐ見せて履くスタイルが好まれますが、ルーズはまさにそんな穿き方にフィットするモデルと言えます。
ヒップホップ的な誇張よりもクリーンなワイドシルエットを楽しみたい場合におすすめです。
なおルーズには亜種として「Loose Straight」や「Low Loose(ローライズ版)」などのバリエーションも存在し、股上の深さ違いやよりストレート寄りのシルエット違いが展開されていました。
Relaxed(リラックス)
リラックスはその名の通りリラックスフィットのゆるめジーンズです。
見た目はバギーやルーズと大差ないように思えますが、実際はバギーほど太すぎず、ルーズよりは太めという中間的ポジションのシルエットです。
股上もバギーやルーズよりわずかに浅めに設定され、腰回りに適度なゆとりを保ちつつゆるやかなテーパードが入るバランスになっています。
リラックスは「ワイドだけどやりすぎない」絶妙な太さなので、初めてシルバータブに挑戦する人にも向いているかもしれません。
年代別のシルバータブの見分け方(タグやディテールの違い)
ヴィンテージのシルバータブを手に入れたら、ぜひタグの年代表記に注目してみましょう。
リーバイスの多くの製品と同様に、シルバータブも内側のケアタグ(品質表示タグ)に製造年月のコードが印字されています。
たとえばこちらはオリジナル90年代当時の紙タグの一例で、下から2行目に記載された「549 0696 48602-3
」という番号列に注目すると、「549
(工場コード)06
(月)96
(年)」という具合に1996年6月製造であることが読み取れます。

このように1990年代~2000年代初頭のオリジナルSilverTabには紙製の厚手タグが使われ、そこに製造年月のコードが隠されています。
紙タグの質感や字体にも時代を感じられ、ヴィンテージ好きにはたまらないディテールです。
一方、現行の復刻版SilverTabや2000年代中期以降の後期生産分では、タグ素材や記載内容にいくつか変化があります。
まずタグが紙ではなく布(綿素材)のタグになっており、印字ではなく織りタグやプリントになっている点が特徴です。

また2000年代以降の製品は生産拠点がアメリカ国外へ移り、タグの「Made in ○○」欄を見れば製造国が分かります。
オリジナル初期の頃は米国製やメキシコ製が多かったのに対し、2000年代中盤以降はアジア諸国で生産されるケースが増えています。
例えば復刻版のタグには「Made in Cambodia(カンボジア製)」などの表記が見られます。
こうしたタグ材質や製造国の違いは年代を判別する手がかりになります。
総じて、90年代オリジナル = 紙タグ・USA製/NAFTA圏製が中心、復刻/現行品 = 布タグ・アジア製 といった傾向があります。
古着屋で年代物にこだわって探す際は、ぜひ内タグの素材感や製造国表示もチェックしてみてください。
なお、シルバータブの外観上のタグ類にも時代やモデルによる違いが存在します。
シルバータブのジーンズには、通常の501などで見られる茶色い革パッチの代わりに黒地にSilverTabロゴが入った布パッチが腰部分に縫い付けられています(これもライン名の象徴です)。

この黒パッチのデザインや素材も年代によって微妙に異なることがありますが、いずれも**“SilverTab”の文字ロゴが入っている点でオリジナル・復刻を問わず共通しています。
また先述のとおりバックポケットのタブ自体も銀色なので、遠目にも通常の赤タブモデルとは区別が付きます。
総合すると、「黒のSilverTabパッチ + 銀のバックポケットタブ + 内側のタグ表示」**が年代見分けのキーとなるディテールと言えるでしょう。
タブの種類(赤タブ、銀タブなど)とその意味
リーバイスのジーンズと言えば、後ろポケットについている小さなタグ(タブ)が象徴的です。



このタブはブランドの象徴でありモデルによって色やロゴが異なります。一般的なリーバイス製品ではおなじみの赤タブ(Red Tab)ですが、SilverTabラインではこのタブが銀色(グレー)になっているのが最大の特徴です。
つまり「SilverTab(銀のタブ)」という名称はここに由来しており、視覚的にも通常ラインとの差別化が図られていました。
タブには「Levi’s®」の文字が入っていますが、シルバータブではそれが銀糸で刺繍されたり銀地のタグに黒字でロゴが入るなど、モデルによって細かなバリエーションがあります。
いずれにせよポケット脇でキラリと主張する銀色のタグこそが、このラインのアイコン的ディテールです。
シルバータブのバックポケットには銀色のLevi’sタブが付属する。
通常のリーバイスは赤いタグなので、一目でラインの違いが判別できる。
このタブの色変更はリーバイスの中でも過去にいくつか事例があり、たとえば1960~70年代のカジュアルラインではオレンジタブが使われました。
オレンジタブは当時若者向け廉価版という位置づけでしたが、現在ではヴィンテージとして再評価されています。主に517や646など70年代カルチャーを代表するヒッピースタイルの定番アイテムとなっています。
シルバータブも同様に、90年代当時は「ストリート向けの派生ライン」という扱いでしたが、銀色タブは今やヴィンテージファッションの象徴として希少価値を帯びています。
リーバイスのタブカラーにはそれぞれ意味があり、赤タブ=メインライン・伝統、オレンジタブ=カジュアルライン、そして銀タブ=ストリート志向ライン、と覚えておくと古着探索がさらに楽しくなるでしょう。
人気モデルとカラーバリエーション
シルバータブの中でも特に人気のモデルとして挙げられるのは、やはり代表格の Baggy と Loose です。
古着市場でもこの2つの需要は群を抜いており、「とりあえず一本目」として探す人も多い定番モデルです。
Baggyは先述のように極太テーパードシルエットが魅力で、ヴィンテージ市場でも不動のNo.1人気。
一方のLooseもBaggyに次ぐ人気で、よりストレートなワイド感が現代のトレンドともマッチするとして高く評価されています。


この他、ゆるめシルエット好きからはRelaxedも支持されていますし、珍しいCarpenterパンツやショートパンツタイプのSilverTabをコレクションするマニアも存在します。
2022年の再リリース時には新たにストレートフィットのSilverTabジーンズも登場しており、こちらは従来モデルより細身ながら太腿にゆとりを持たせた設計で注目を集めました。
色(カラー)のバリエーションもシルバータブの楽しみの一つです。
基本となるデニム生地のインディゴブルー系は、濃紺のダークインディゴから色落ちしたライトブルーまで幅広く存在します。
中でもライトインディゴ(淡い水色)の色落ちジーンズは90年代らしいヴィンテージ感が強調され、穿き込むことで生まれるムラ感が「古着らしさ」を演出してくれる一本です。
対照的にブラックデニム(黒色)のSilverTabも非常に人気があります。黒はどんな服とも合わせやすくシックになりすぎないため、ストリートファッションのみならず様々なテイストに取り入れやすい万能カラーです。
実際、シルバータブを代表するルーズフィットにはブラックデニムとライトインディゴの両方が定番色としてラインナップされており、どちらもオーバーサイズコーデに最適な一本として人気を二分しています。
この他にも、グレーやブラウンがかったデニム、生デニムに近い濃色からブリーチの効いたユーズド加工まで、多彩なカラーバリエーションが存在しました。
90年代当時は奇抜な色柄のパンツも流行した背景から、一部チェック柄フランネル地のSilverTabやカモフラ柄ツイル素材のボトムスなど、変わり種が展開されていたこともあります(入手難度は高いですがファン垂涎のレアアイテムです)。
総じて、ブルー系とブラック系がまず押さえるべき定番カラーで、その中で色落ち具合の違いを楽しんだり、状態の良いデッドストックを探したりするのがシルバータブ古着収集の醍醐味と言えるでしょう。

定番アイテムではないですが、Jamiroquaiとのコラボアイテムが熱いです
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あとがき
以上、リーバイスのシルバータブについて、その歴史から特徴、楽しみ方まで専門的かつマニアックに解説してきました。
90年代の異端児デニムとして誕生し、時を経て再評価されているSilverTabは、ヴィンテージ好きならずとも一本は持っておきたい魅力に溢れています。
ぜひ自分好みの一本を見つけて、シルバータブならではのワイドシルエットファッションを満喫してみてください。
90sの魂を宿したそのデニムが、きっとコーディネートに新鮮な個性を与えてくれるはずです。
今後も定番アイテムとして注目が続くであろうシルバータブ、あなたもぜひその奥深い世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
自己紹介

EAGLEBASE
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