
スウェットシャツの世界で「避けて通れない」とまで言われる不朽の名作
“チャンピオン”の「リバースウィーブ」です。
1930年代に誕生したこのスウェットは
今や「キング・オブ・スウェットシャツ」とも称され
ヴィンテージスウェット好きの間で根強い人気を誇ります。
この記事では、そのリバースウィーブの歴史やユニークな製法
年代別の仕様違い、さらに現代の市場価値やコレクター心をくすぐる豆知識まで!
チャンピオン好きはもちろん
ヴィンテージファッションに興味がある方はぜひご覧ください!
リバースウィーブ誕生の歴史
1919年創業
CHAMPIONは1919年ニューヨーク州にて
「KNICKERBOCKER KNITTING MILLS」
として創業、その後1923年に
「CHAMPION KNITTING MILLSに社名を変更
ニットウェアの製造、販売を開始
その後、群を抜く革新的プロダクトが
1930年代に登場した「リバースウィーブ」製法
のスウェットシャツです。
開発のきっかけ
開発のきっかけは当時寄せられた
「洗濯でスウェットが縮んでしまう」
というクレームでした
チャンピオンのセールスマンだった
サム・フリードランドがこの問題に着目し
生地の使い方を逆転させる斬新なアイデアを考案。
1934年にその製法の開発に成功し
1938年には特許を取得します。
こうして誕生したリバースウィーブ製のスウェットシャツは
アメリカの大学や軍隊のトレーニングウェアとして広く採用され
耐久性と機能性から高い評価を得ました。
カレッジ、ミリタリープリントは人気が高く、現在価格が高騰しています。
リバースウィーブ製法とは?
リバースウィーブとは
英語で“Reverse Weave”と書き
その名の通り
「生地の織り方向を通常とは逆に使用する」ことを意味します。
誕生当時のスウェットシャツ最大の弱点であった
縦方向への縮みを防ぐため
チャンピオンは本来縦に使うはずの生地を
横向きに使うという画期的発想に至りました。

写真 80年代 USMA リバースウィーブ
左側:ボディーサイドリブ 右側:ボディー生地となっています
縦縮みを防ぐ「逆向き生地」
リバースウィーブ最大の特徴は
生地を縦ではなく横方向に使っている点です。
一般的なスウェット生地は縦方向(経方向)に織られた繊維に沿って裁断・縫製されますが
リバースウィーブでは織り目を横向き(緯方向)に使用します。
これによって洗濯時に起こりがちな縦方向(着丈)の縮みを大幅に軽減できるのです。
実際、当時のアスリートからは「洗濯を繰り返しても丈が極端に短くならない」と重宝されたといいます。
生地の向きを“リバース(逆転)”させるというシンプルながら革新的なアイデアが
スウェットシャツの弱点を見事に克服したのです。
横方向への伸縮とサイドリブ
生地を横向きに使うことで丈縮みは防げますが、その代償として身幅方向の縮みが起きやすくなります。
チャンピオンはこの課題にも巧みに対処しました。
リバースウィーブのスウェットの両脇を見ると、胴体とは別素材のパネルが縫い込まれているのがわかります。
これが通称「サイドリブ」や「サイドパネル」と呼ばれるリブ編みの布地です。
伸縮性の高いリブ素材を脇に配することで、横方向への縮みを吸収し、動きやすさも向上させています。
このサイドリブは別名「サイドアクションリブ」とも呼ばれ、アメフトなど激しい動きのトレーニングでもストレスのない可動域を確保する役割を果たしました。
脇部分の縫い目には
「フラットシーマ」という
縫製技術が採用されています。
フラットシーマとは段差の少ない平らな縫い目を作る手法で、肌に当たってもゴロつかず快適です。
厚手のスウェットながら着心地が良いのは、こうした細部の工夫によるものなのです。
年代別の仕様の違い

100年近い歴史を持つチャンピオンは
時代ごとにロゴや製品タグ、素材配合など様々なマイナーチェンジを行っています。
リバースウィーブのヴィンテージも例に漏れず
年代によってディテールに違いがあり
コレクターたちは主にネック部分のタグデザインで年代判別をしています。
ここでは1930年代の初期モデルから1990年代まで
リバースウィーブの年代別仕様の変遷をざっくりとまとめてみましょう。
1930〜1950年代:ランナーズタグ
リバースウィーブが生まれた1930年代当時
チャンピオンのスウェットには通称「ランタグ」と呼ばれるネームタグが付いていました。
種類 | 画像 | 年代 | 文字 | デティール |
---|---|---|---|---|
初期 | ![]() TRUE TO ARCHIVE 1st MODELより | ~40年代 | CHAMPON KNITWEAR CO inc ROCHESTER ,NY. サイズ表記 SET COLORS IN SALTWATER WASH SEPARATELY AND CAREFULLY | 黒×黄色×白 左上にランナーズマーク |
中期 | ![]() | 40~40年代半ば | 不明 | NAMEとADRESSが記入する欄あり |
後期 | ![]() | ~50年代 | CHAMPON KNITWEAR COMPANY – INC. ROCHESTER,N.Y. SIZE – サイズ表記 NAME | NAMEのみ 第二次世界大戦後に発売されたモデル “デカランタグ”と呼ばれています |
最終 | ![]() | 50年代初期 | CHAMPION PROCESSED SPORTSWEAR サイズ表記 | 左中央にランナーズマーク 赤×青×白 |
どの種類も生産期間が短く、古着市場でも滅多に出回らない希少性の高いアイテム
特にランタグ中期は戦時中だったこともあり生産数がかなり少ないと言われています。
1950~1970年代:タタキタグ
1950年代になるとタグデザインは一新され、「タタキタグ」と呼ばれるタイプが登場します。
四方を縫い叩いて縫い付けられた丈夫なタグで
この頃からタグに「REVERSE WEAVE」の文字が初めて明記されるようになりました。
つまり、リバースウィーブ製法のスウェットであることを正式にタグ上でアピールし始めたのです。
種 類 | 画像 | 年代 | デティール |
---|---|---|---|
前 期 | ![]() | 50年代半ばまで | SIZE表記が上にあり |
中 期 | ![]() | 50年代 | SIZE表記が下にあり |
後 期 | ![]() | 60年代 | SIZE表記が真ん中にあり RN表記有り |
最 終 | ![]() | 60年代後半 | SIZE表記が真ん中に大きくあり 生地がコットン100%から ポリ混に変更されました ・社名の変更 |
1950年代後半から60年代にかけては、タグ表記以外にもいくつか変更点があります。
まずRN番号(登録識別番号)の導入です。
1960年代前半以降のタグには「RN」と始まる番号が追加されます。
これはアメリカの商務省が制定した繊維製品の識別制度によるもので
メーカーごとに割り振られた登録番号が記載されるようになったためです。
さらに素材面での変化も見逃せません。
創成期から1960年代半ばまでは
裏起毛のコットン100%で作られていたチャンピオンのスウェットですが
1967年前後よりコットン90%・ポリエステル10%の混紡へと切り替わっていきます。
これは当時の防火規制の影響とも言われ
厚手コットン製スウェットシャツの可燃性を抑える目的で化学繊維をブレンドする必要があったためです。
また同じ頃、チャンピオン社の社名が「Champion Knitwear」から
「Champion Products, Inc.」へ変更されたことに伴い
タグの社名表記も更新されています。
このように60年代は素材・表記ともに過渡期であり
タグを見るだけでそのスウェットがおおよそ何年代の製造か推測できるようになっています。
タタキタグは当時の生産背景、情勢が感じられる魅力があります!
1970年~1980年初頭:単色タグ
1970年代に入ると、チャンピオンのロゴデザインが一つの完成形に到達します。
現在でもお馴じみの“C”マーク入りのChampionロゴが確立し、タグにも大きくそのロゴが印刷されるようになりました。
この1970年代前半のタグは背景色なしで1色刷りのシンプルなもので「単色タグ」と呼ばれます。
カラーリング
初期の単色タグはSIZE毎にカラーリングが変わっており
XS | S | M | L | XL |
---|---|---|---|---|
グリーン | ブルー | レッド | マルーン | ゴールド |
ヴィンテージが好きな人には”赤単”,”青単”聞き覚えがあると思いますが、カラー毎に略称で呼ばれています。
後期型の単色タグではXL以外のサイズタグ色が赤と青の2色のみに簡略化されています。
素材
1970年代前半(〜76年頃)まではコットン90%・ポリエステル10%の混紡でしたが
1970年代後半(76〜81年頃)にはポリエステルに代わりアクリル10%を混紡するようになります。
アクリル素材はポリエステルに比べて発色が良く柔らかな風合いが出せるため
保温力や肌触りの向上につながりました。
種 類 | 画像 | 年代 | デティール |
---|---|---|---|
前 期 | ![]() | 1970年~1976年 | ・5色サイズ毎にカラーリング ・コットン90% ポリ10% ・前期でも初期はアンダーバー入り |
後 期 | ![]() | 1976年~1981年 | ・3色のみ ・ポリ→アクリルに変更 |
このように同じ単色タグ時代でも前期と後期で微妙な違いがあり、マニアにとっては見逃せないポイントとなっています。
1980年~1990年:トリコタグ
1980年代になるとタグデザインは再び変化し、トリコロール(三色)タグが採用されます。
白地のタグにチャンピオンのロゴとサイズ表記が青・赤・白の3色配色でデザインされたもので
「トリコタグ」の愛称で親しまれています。
トリコタグの時代も前期・中期・後期に分類され、実は細かなデザイン差や素材配合の変遷があります。
前期
素材
グレーのボディにはコットン82%・アクリル12%・レーヨン6%とレーヨン混紡の生地が使われ始めます
カラー物は従来通りコットン90%・アクリル10%が使われています。
このレーヨン混紡は杢グレー特有の色味を出すためで、レーヨンを加えることで独特の光沢と柔らかな風合いをプラスしていました。
デザイン
前期の前期:MADE IN USAの表記がタグの裏面に記載
前期の後期:MADE IN USAの表記がタグの表面に記載
中期
素材
コットン90%・アクリル10%
デザイン
首タグの裏に洗濯時の注意事項を記載した紙タグが付属している
後期
素材
コットン89%・アクリル8%・レーヨン3%へと微調整される
種 類 | 画像 | 年代 | デティール |
---|---|---|---|
前 期 | ![]() ![]() | 1981~1983 | 素材 ・コットン82%・アクリル12%・レーヨン6% ・コットン90%・アクリル10% デザイン ・MADE IN USAが裏面に記載(前期) ・MADE IN USAの表記がタグの表面に記載(後期) |
中 期 | ![]() ![]() | 1983~1985 | 素材 ・コットン90%・アクリル10% デザイン 紙タグが付属 |
後 期 | ![]() | 1985~1990 | 素材 ・コットン89%・アクリル8%・レーヨン3% |
タグの表記の微修正はありますが、基本的に大幅な変更はなし
生地の割合とタグの枚数が年代を見分けるポイントです
1990年代:刺繍タグ
90年代に入るとチャンピオンのスウェットタグは「刺繍タグ」と呼ばれるデザインに移行します。
タグ自体がプリントではなく刺繍で作られたタイプで
配色は従来のトリコロールを踏襲しつつ、タグの形状がやや縦長になりました。
刺繍タグ初期(90年代前半)は生地配合がコットン89%・アクリル8%・レーヨン3%と80年代後期とほぼ同様でしたが
90年代後半になるとコットン90%・アクリル10%の混紡に変更され
同時に大きな転機として生産国が従来の「USA製」から「メキシコ製」へ切り替わったことが挙げられます。
かつて“チャンピオン=USA製”が当たり前だった時代から、グローバル生産へと移行し始めたのがこの頃です。
種 類 | 画像 | デティール |
---|---|---|
前 期 | ![]() | コットン89%・アクリル8%・レーヨン3% |
後 期 | ![]() | コットン90%・アクリル10% USA製とメキシコ製が混在 |
現代における市場価値と人気プリントの紹介
市場価値
現在の市場で具体的にどの程度の価値があるのか?気になるところですよね。
状態や年代、プリントの有無によって値段は大きく左右されますが
一般的な相場感として70〜80年代の単色タグ・トリコタグのスウェットであれば数千円〜数万円台
希少なプリント入りやコンディション極上品なら数十万円に達するケースもあります。
例えば、50〜60年代のタタキタグ期のスウェットで大学や軍のプリントが鮮明に残っているもの
未使用デッドストック級のものなどはコレクター垂涎で、高額取引の報告もあります。
もちろん手の届きやすい価格帯のものも多く存在しますが、年代やデザインによっては
ヴィンテージデニム並みに高額に高額となっています。
サイズ感に関してはダウンサイズしており”ビッグサイズ”から”ジャストサイズ”が主流となりつつあります。
またクルーネックよりパーカーのほうが個体数が少ないため高額となっています。
人気プリントのご紹介
段&カプセルプリント(カレッジもの)


段数、カプセル、プリント内容によって価格が異なりますが段数が増えれば増えるほど高い傾向にあります。
ミリタリープリント


NAVYやUSMAが特に人気となっており年代、サイズ、状態によっては十数万~で取引されています。
目無し

胸にCロゴがないもの
プリント手法
フェルトアップリケ・ステンシル
最初期頃に多い手法で、カレッジのイニシャルであったりARMYなどのステンシル。
プリント技法が限定的であったため簡易なものが多い。
染みこみ(水性プリント)
生地にインクが染み込むことで、着込むうちにプリントが生地と一体化し、柔らかく馴染んでいきます。
新品当時はインク成分がややざらついていても、洗濯を繰り返すうちに滑らかな手触りに変化するのが特徴です。
この経年変化が独特の風合い(「アジ」)を生み、ヴィンテージの評価が高いです。
主に40~70年代初頭までに多く、それ以降はラバープリントが主流となります。

以上がリバースウィーブの歴史、製法、年代別仕様、そして現代の市場価値に関する解説でした。
ヴィンテージスウェットの奥深さとチャンピオンの名作たる所以を
少しでも感じていただけたなら幸いです。
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昨今、ヴィンテージ市場は年々価格が高騰し、「本物」に出会える機会は確実に減少しています。
かつては比較的手が届いた名作スウェットやミリタリージャケットも
いまや一部のコレクターの手に渡り
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私たちはそんな状況に強い危機感を覚えました。
だからこそ、「ヴィンテージを次の世代へ」繋いでいくことを大切にしたい。
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